どうも、ドロッポ医界の女王様、Castella(カステラ女王様 @Rainha_Castella )です。
この記事で言いたいことは一つだけ。「当直やめて夜勤シフト組んだらいいのに」です。そのためには主治医制やめてチーム制にする必要もあるのですが、今回は、望ましい多少マシなシフトの組み方について。
チーム制については、こちら。
この記事は、医師でない人が読んでも、役に立ちません。
真面目に医師やってる人が読んだら、ムカつくだけかもしれません。
ブラック企業と罵られながらも、月に何回も当直をさせています
きっかけはこの質問(の形式をとった愚痴?)。
私は現在、当部署の当直表を作成する立場です。
若手医師に、「ブラック企業」と罵られながらも、月に何回も当直をさせています。医療機関におけるワークライフバランスを実現するため、産業保健が果たすべきこと、産業保健ができることとは、どのようなものがあるでしょうか?
ドロッポ医と公言して憚らない私のところに質問するほど追い詰められてるっぽいので、マジレスしてみます。
なお、質問なさった先生の科とかベッド数とか医師数とかは不明(書いてなかった)。
問題解決のために質問したというよりは、月に何度も当直させざるを得ない自分の立場を愚痴りたかっただけと思うけど、こういう愚痴は良い愚痴だと思うんです、何かを変えられる可能性があるから(上から目線)。もし、質問者さんが、何かを変えられる立場にあるのなら、工夫してみてくれると嬉しいです。でも、過労死しそうなら、とっとと逃げてください。
頻繁な当直や長時間労働自体に対して産業保健ができることはない
断言しますが、長時間労働自体に対して、産業保健ができることはありません。そりゃまあ、「健康を害するから、睡眠削らせるような長時間労働ヤメろ」「深夜業務は可能な限り少なく! 月に複数回させるんなら単発じゃなくて1週間単位で」くらいは言えるよ?1,2) でも、長時間労働するさせないは労務管理。それに、それを当直表作ってる(そして本人が一番当直してると予想される)アナタが、若手医師に言うの? 当直させなきゃいけないから困っているんですよね?
長時間労働や睡眠不足でも健康を失わないようにするための魔法は医学ではありません。
産業保健にできることがあるとすれば、「長時間労働や睡眠不足は健康を損なう」「長時間勤務も体に悪いけど、深夜業務モナー」1) という当たり前すぎることを、しつこく繰り返し雇用主と被雇用者に示すことと、多少マシな勤務シフトを提案すること(←今ここ)くらいです。
当直より家に帰ってからの呼び出しの方がキツイ
こんなこと私が言わなくても体感してると思いますが、忙しい科において、若手医師や指導医を追い詰めるのは、主治医制と当直(という名の夜勤)のコンボ。当直(という名の夜勤)回数が多少増えても、家で休んでいるときに気軽に呼び出されたりするんでなければ、そこまで消耗しません。
日勤終わって翌日朝までの当直(という名の夜勤)した後、またそのまま日勤。。。で、やっとお家に帰って眠れる。。。と思ったら、「主治医だから」という理由で呼ばれるのは地獄。
そんな日の翌日も普通に仕事はあるわけで。。。
当直ではなく夜勤シフトを組もう、本気で
マジレスしますが、もし、主治医制採用してるんだったら、そして、やめさせることができる立場にあるんだったら、とっとと主治医制をやめてチーム制にしてしまいましょう。チーム制についての詳細はここでは述べませんが、人数が限られているからこそ、勤務が終わった後の主治医がその場にいなくても、適切な処置ができる仕組みを作って欲しいのです。そのためには、当直は夜勤に呼称と報酬と実態と自己裁量の範囲を変えましょう。
習慣的に当直って言葉使ってますが、労働基準法的には、
宿直:寝当直(巡回くらいはする)
夜勤:急変対応、救急外来対応など、寝てる間に呼び出されること前提
大事なことなので、復習しておきましょう。皆さんが当直と呼んでいるモノは、(完全寝当直以外は)夜勤です。ま、どうでもいいと思ってる先生多いでしょうが。
365日24時間、労働基準法遵守ならワンオペでも4人必要
カナダの労働安全衛生局が推奨する方法で、日本の労働基準法遵守して夜勤シフト♥組んでみた
豆知識として、労働基準法の枠内で、365日24時間必ず人並みの睡眠をとった医師(ただしワンオペ)がいる状態にするためには、4人の医師が必要です(下図)。365日24時間常時2人なら8人ね。ま、机上の空論ですが(病院半分に減らせば実現可能なのにねぇ)。
なお、以下のモデルには、欠勤の場合の冗長性を持たせていません。病気にならず、介護や育児の必要なく、通常の休日以外は有給休暇も取らず、学会出張等にも行かない4人です。すごいね、病気しないとか、最強ロボだね。
<凡例>
囗: 休み
︎: 06:45-15:15
: 14:45-23:15
: 22:45-7:15
病気にならず、介護や育児の必要なく、有給休暇も取らず、出張にも行かない最強ロボな医師4人で労働基準法を守ったシフト組むとこうなるってだけで、現実にはこんなプラン無理。知ってますよ、いくらなんでも、私でも。
ここで言いたいのは、たった4人の医師で365日24時間、1つの診療科が回せると思っている人がいたら、その人は控えめに言ってバカということ。でも、時々そういう病院あるよね。すごいね、最強ロボがいるんだね。
ちなみに、上図はカナダの労働安全衛生局(Canada Centre for Occupational Health and Safety)が雇用主に推奨しているシフトの組み方をヒントにスケージュールを立てたものでもあります。2)
カナダの労働安全衛生局(Canada Centre for Occupational Health and Safety)が雇用主に推奨しているシフトの組み方ヒント
このヒントは、割と有名なので、至る所で拾えますが、一応載せておきます。
Tips for employers
- Avoid permanent (fixed or non-rotating) night shifts.
- Keep consecutive night shifts to a minimum.
- Avoid quick shift changes.
- Free weekends are better than a single day off.
- Avoid several days of work followed by four- to seven-day “mini-vacations”.
- Keep long work shifts and overtime to a minimum.
- Consider different lengths for shifts.
- Examine start-end times.
- Keep schedules regular and predictable.
- Conduct a risk assessment for every task to be performed during a specific shift.
- Night shifts should not be too long and should end as early as possible. In this way workers can get more and undisturbed sleep.
- Shift changes should be made in such a way that the worker can adapt easily to them. ‘Rotating forward’ (morning – afternoon – night) has been proven to be easier to adapt to than rotating backwards or having irregular shift changes.
- Morning shifts should not start too early. The earlier the shift starts, the earlier workers have to get up and the less sleep they get.
- Shift schedules should be set in consultation with the worker.
- Scheduling the same worker to more than one shift a day should be avoided.
出典:Getting a Handle on Shift Work|CCOHS http://www.ccohs.ca/newsletters/hsreport/issues/2014/11/ezine.html
実際の当直(という名の夜勤)スケジュールはこんな感じ、たぶん
平日昼間は外来やら検査やら手術やらをする医師が殆どなので、実際には、下図のようなことになっているかと思います。ここ10年以上、病院で当直してないんで、想像で作図。
デフォルメしてますが、実情と大差ないでしょう。実情の方が悲惨でしょうけど。
<凡例>
: 休日という名の自主出勤日
: 06:45-18:15(日勤)
: 当直という名の日勤からの連続夜勤(6:45-翌7:15)
恐ろしいのは、20:15に帰宅できた日ですら、夜中に「主治医だから」という理由で電話がかかって来て、病院に再度行かなくてはいけない日が少なからずあるという事実です。休日は当然、自主出勤するわけですが、自主出勤して帰宅後に「主治医だから」と呼び出されたりもします。で、こういうの、勤務時間としてカウントしてくれる病院は非常に少ないのです。
当直医(と言う名の夜勤医)が全部やってくれりゃ良さそうですが、夜勤医もギリギリのヘロヘロかつ他の医者の患者さんに手を出してはいけないっぽい風潮があるので、「主治医に電話して」という指示を出すのが精一杯だったりします。ああ、恐ろしい。
不在時の急変の指示を完璧に出してれば、家に帰っても呼び出されたりするはずないとかいう、アホがいますが、安定してないから入院してるわけですしおすし。
ご提案する(ややマシな)シフト
以下に、多少マシな当直シフトを示します。これがいいなんて全く思っていませんし、この状態で突然死があればさくっと業務上認定されます。が、患者さんの状態が予測できなくても、その日の仕事の入りと終わりの予定が立つので、上のスケジュールより体力的心理的にマシ。帰宅してからの呼び出しがなくなるので、睡眠障害も起こりにくくなります。携帯電話に怯えずに眠れるって素晴らしい。ただ、このプランも4人が病気にならない最強ロボである必要があります。有給もとれません。相当に妥協して作っています(救急病院の数半分にすれば、8人にできるよ)。
<凡例>
囗: 休み
: 06:45-18:15
: 17:45-翌7:15(夜勤)
当直(という名の夜勤)をする医師が少ないと、アルバイト医師を雇ってやり繰りしようとしますが、これは悪手。アルバイト医師は夜間外来くらいはできるでしょうが、入院患者さんのことは「主治医に聞いて」になります。
また、循環器/消化器/呼吸器/内分泌などをまとめて「まるめ内科/外科当直」にしてしまう病院は多いと思いますが、内科であっても他科や他病棟の入院患者さんのことはわかるはずないので、結局「主治医に聞いて」が生じます。「まるめ内科/外科当直」でどうにか回るのは、同様の理由で夜間外来だけです。
まとめ:質問してくださった先生への回答
- 当直回数が減らせないのなら、単発複数回ではなく、夜勤7日連続の方が負担が少ない
- 勤務が終わった後に「主治医だから」という理由で呼び出さない(そういう仕組みをつくる)
- 当直をキチンと夜勤扱いし、自宅に戻った医師が携帯電話に怯えずに生活するためには、主治医制の見直しが不可欠だが、今回はそれには触れない
- 妥協して作った夜勤シフトですら、過労死ライン超えていることを理解しておく
この質問してくださった先生が、本当に実在するのか、ネタなのかは私には知る由もありませんが、職場のしくみが変えられるのなら、変えてください。主治医制からチーム制への変更は大きすぎる変化なので、「主治医だから」という理由で呼び出されずに済む仕組みづくりから始めるのが現実的でしょう。
でも、もし追い詰められていらっしゃるようでしたら、逃げ場がなくなる前にとっとと逃げましょう。探せば、少しはマシな病院もあるし、ドロッポ医でも生きていけるし、それなりにちゃんと不労所得作っとけば医者自体やめてもなんとかなります。
【参考文献】
1)OSH Answers Fact Sheets|CCOHS https://www.ccohs.ca/oshanswers/ergonomics/shiftwrk.html
2)Getting a Handle on Shift Work|CCOHS http://www.ccohs.ca/newsletters/hsreport/issues/2014/11/ezine.html
帰国子女の医学部3年生です。このブログを読み、激しく共感しています。アメリカに住んでいた私からすると、日本の医者は患者さんのために身を削って働く、長時間労働が美徳といった考え方は理解し難く、給料少々低くなっても、夜勤、日勤交代制が実現すればいいなと思っています。そうでなければ、美容外科、産業医、MDになろうと思っています笑
由奈さん
コメント嬉しいです。
特に、このブログ内の、この記事にコメントくださったのがとても嬉しいです。
ありがとうございます。
私もカナダで産業医学勉強するまでは「患者さんのために身を削って働く、長時間労働が美徳なのは、文化だから仕方ないのかな(私は嫌だけど)」、くらいの考え方でしたが、そうやって働いている限り、何も改善しないと思うようになりました。
今は、由奈さんがおっしゃるように「日本の医者は患者さんのために身を削って働く、長時間労働が美徳といった考え方は理解し難い」です。医者だけじゃなくて、みんな働きすぎだと思っています。
産業医、いいですよ。メンタルヘルスばっかりの産業医は、私はあまり好きじゃないから、日本ではもうやらないけど。メンタルヘルスに興味と関心があるのなら、ぜひ!
なお、カナダには職業性疾病の予防という旧来の産業医がの仕事がけっこう残っているので、カナダで産業医になろうとしましたが、英語下手すぎて病棟実習できなかった(もともと、日本語でも他人の話あんまり聞いてないのが災いしたと思われます)+MCCQEpart2にも合格できなかった、ので、隠居してますw
由奈さんだったらアメリカやカナダで産業医できるかもしれない。若い世代でそういう人がでてきたら嬉しいな。
MDになるんなら、絶対外資系または将来欧米で活躍するつもりでがっつりやっちゃってください。日本のMDはあまりにも低く見られがちで(めっちゃ優秀な先生がたくさんいらっしゃるんですけどね)、信じられないくらい失礼な態度とる爺医婆医も多く、何年かすると辞めてしまったり、海外に出てしまったりする先生が多いです。
返信ありがとうございます。
3年で専門科目の授業が始まったのと、初期研修医になった彼氏から仕事の話を聞き、理系で資格取れる学部に行っておけば海外で活躍できる可能性が広がるくらいの気持ちで医学部に入った私にとっては、こんなプライベートを犠牲にしてまで働きたくないと思ってしまい、そう思い続けたらうつになってしまいました(笑)
カナダの医師事情、産業医事情はとても勉強になります!
MDになるにも最低3年は臨床経験積まなくてはいけないので、またうつになってしまいそうな気もしますが、MDになるなら、外資がいいので、医学部ですがアメリカ資本の製薬会社のインターンに応募しました。
大丈夫。医者ほぼほぼ辞めちゃった今も、医師免許とったことに対しての後悔はゼロなので、理系で資格取れる学部っていう選択肢は悪くないですよ。由奈さんの場合は、海外で医師やMDとして働ける可能性が非常に高いので、大変賢い選択だと思います。
それから、書こう書こうと思って、毎回忘れちゃうんだけど、産業医+労働衛生コンサルトのいいところは、聴診器と血圧計、ヘルメットと安全靴、自宅兼事務所があれば、開業できちゃうところ。内科とかと兼業じゃなくて、産業医+労働衛生コンサルタントのみでやって行く場合に限りますが、開業資金がほとんどいらないんです。
あとは、将来、どの道に進むにしても、資金運用の勉強を少しずつでもはじめとくといいかな。学生のうちに1000円でも2000円でも使って実際に株式等の運用すると良いと思います。私は自分が若い時に、資金運用について考えたことがなかったのは、ちょっと残念に思ってます。あんなに時間があったのに、時間をソロモンの鍵&ドラクエ&ファイナルファンタジーで無駄遣いしてしまいました。
返信ありがとうございます(^^)
産業医+労働衛生コンサルタントという手は知りませんでした!勉強になります!
資産運用の勉強は学生のうちが一番しやすいですよね!今は平日の空き時間は、社会勉強と息抜きを兼ねてバイトでホステスしていますが、やはり月30万弱が限界なので、資産運用は必要だなと感じています。