みなさんこんにちは、最前線の医療従事者の後方支援をしている人のさらに後方から(気持ちだけは)支援している(つもりの)カステラ👑女王様@Rainha_Castellaです。
今日は95Nマスクの再使用について。なお、こちらの記事は、新コロナウイルス感染症の最前線で働く医療従事者向けの記事です。N95マスクは、普通の人がつけても息苦しいだけであまり意味がありません。私ももってないし、欲しいとも思ってないっす。
本当の本当は、「新品のN95マスクを単回使用の使い捨てじゃないと、最前線には立たない!」 くらいの勢いで、医療従事者には身を守って欲しいのですよ。でも、そうも言ってられない、調べる時間もない方も多いことと思います。(注:本当は、そう言っていいんですよ! 「最前線に立てないのならクビだ」って言われたら、大喜びでクビになっていいんですよ? でも、今そこにいるってことは、きっと、最前線にいることの誇りがあるってことだと思うので、超後ろの方から後方支援させていただきます。)
目次でサクッと把握
いきなりまとめ
期待できるやつ
1)厚生労働省の「N95 マスクの例外的取扱い」では、・過酸化水素水プラズマ滅菌器を用いた再利用法・過酸化水素水滅菌器を用いた再利用法・1人に5枚のN95 マスクを配布し、5 日間のサイクルで毎日取り替える再利用法 の3種類の方法を紹介しています。
2)JRGOICP 職業感染制御研究会でも以下の方法を紹介しています以下、まとめを丸パク。
〇 N95の除染方法
N95マスクの除染にあたっては、以下の3つの除染方法が検討されています。
(1)加湿熱、(2)紫外線(UVーC)、(3)過酸化水素蒸気の使用が文献で支持されています。
- 加湿熱を利用する ファクトシート PDF(eng) PDF(jp) 技術レポート PDF(eng)
N95マスクの温湿度によるSARS-CoV2の不活化については現在のところ証明されていない。しかし、60℃-75℃、30分で溶液中のコロナウイルスを不活化できることが証明されている。加湿熱は広い範囲の環境で容易に実施できる可能性のある低コストの策の一つになり得る。しかし、過度の加熱サイクルはN95マスクの密着性とフィルター性能を損なう恐れがある。さらにこの方法は細菌やカビのリスクからは保護されない。リスクが軽減されれば、この加湿熱手順は将来の実現可能性研究に役立つ。- 紫外線(UVーC)処理する ファクトシート PDF(eng) PDF(jp) 技術レポート PDF(eng)
センサーを利用し、適切に1J/cm3以上のUV-C線量をN95マスクに照射できれば、この方法でSARS-CoV2を不活化できる可能性は高い。しかし、これはまだSARS-CoV2で直接検証されたわけではない。この方法は、いくつかの細菌の重感染リスクを予防できる可能性はあるが、全てではない。適切な1J/cm3以上のUV-C線量を確保できる機器の入手は容易ではないかもしれない。- 過酸化水素を使う ファクトシート PDF(eng) PDF(jp) 技術レポート PDF(eng)
「マスクの例外的取扱いについて(厚労省通知令和2年4月10日) PDF(※)」で紹介されている除染の方法である。過酸化水素蒸気(HPV)または過酸化水素ガスプラズマ(HPGP)を資料する方法である。 適切に実施され、N95マスクに有機物が付着していない限り、HPVとHPGPの機器標準プロトコルはどちらもSARS-CoV-2と細菌芽胞を不活化する可能性がある。HPGPとHPVは個別のプロセスであり、除染の期間と推奨される最大使用回数は完全に異なる。
※マスクの例外的取扱いについて(令和2年4月10日) PDF N95マスクの効率的な使用を促進する目的で、N95マスクの適切な利用と、例外的取り扱いとして過酸化水素水プラズマ滅菌器を用いた再利用法の具体的な方法が説明されています。source: JRGOICP 職業感染制御研究会, http://jrgoicp.umin.ac.jp/index_ppewg_n95decon.html
やっちゃアカンやつ
こちらも、JRGOICP 職業感染制御研究会のまとめを丸パクします。
N95マスクの再利用時の注意 PDF(eng) PDF(jp)
以下の方法はN95マスクの濾過効率を著しく低下させるか、または生物学的汚染物質を十分に不活化できないことが示されています。N95マスクの除染には使用しないで下さい。
×避ける(ダメ):
×石鹸水:石鹸水に浸漬すると複数のN95モデルで濾過性能が低下することが示されています。微粒子を付着させやすいように帯電しているフィルターの帯電性が落ち、性能が低下すると考えられています。
×アルコール:フィルターの直接ダメージを与え、性能が低下します。
×漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム):漂白剤を含む溶液に浸漬するとN95マスクの濾過効率が低下することが示されています。ただし、漂白剤を含むワイプ(0.9%次亜塩素酸塩)で3回拭いてもいくつかのモデルのN95マスクには損傷を与えないことも示されており、表面を拭くなどには利用できる可能性があります。また、漂白剤の残留には健康リスクがあり、特に喘息や過敏症のある人には危険です。
×一晩の保管:SARS-CoV2は環境表面で3日間以上、活性維持できることが報告されており、室温で一晩置いただけではN95の除染は十分でないことが示されています。source: JRGOICP 職業感染制御研究会, http://jrgoicp.umin.ac.jp/index_ppewg_n95decon.html
蒸気化過酸化水素・過酸化水素水プラズマ除染と湿熱除染は、期待できる/特に道具のいらない方法もある(1人に5枚のN95 マスクを配布し、5 日間のサイクルで毎日取り替える再利用法)
何度も書きますが、新品のN95の使い捨てが最善策です。でも、変な除染方法で再使用するくらいなら、ある程度知見のある方法で除染した方がマシ。
うえのまとめでも紹介しましたが、厚生労働省では、過酸化水素水プラズマ滅菌器を用いた再利用方を紹介しています(厚生労働省, 2020)。過酸化水素空いプラズマ滅菌器が利用できるのなら、コレが「次善の策」になります。
N95DECONでは、期待できる方法として、蒸気化過酸化水素除染または過酸化水素水プラズマ除染(自分ちでは無理)と湿熱除染(自分ちでできるかもしれない)を紹介しており、その日本語翻訳ばJRGOICPから出ています(N95DECON, 2020; JRGOICP 職業感染制御研究会, 2020)。他に、N95DECONでは、UV-C除染も紹介されています(私個人は、UV-Cによる劣化が否定できないと勝手に思ってるので、このブログ記事では簡単な紹介に留めます)。
また、CDCサマも、N95の除染&再使用についてDecontamination and Reuse of Filtering Facepiece Respirators のページにまとめています。このページは参考文献もしっかりしているので、病院等で職員の感染症対策に対して責任持つ立場の方は、是非ご覧ください。また、CDCサマはN95の延長使用についてのガイダンス:Recommended Guidance for Extended Use and Limited Reuse of N95 Filtering Facepiece Respirators in Healthcare も発表しておられます(敬語っ)。
なお、CDCサマの延長使用についてのガイダンス記事を、最も信頼できるレベルで翻訳しているのは、COVID19医療翻訳チーム(COVID19-JPN.COM)サマで、 CDC_医療機関のためのN95マスクの 延長使用/限定的再使用に関する推奨ガイダンス☆に翻訳があります。
特に道具のいらない再利用法
1人に5枚のN95 マスクを配布し、5 日間のサイクルで毎日取り替える再利用法
この方法は悪くないとおもうのですが、エビデンスが限られているのが、ちょっと辛いです。でも、貼っておきます。
新型コロナウイルス感染症はプラスチック、ステンレス、紙の上では 72 時間しか生存できないことが報告されていることから、N95 マスクを 1 人につき5枚配布するとともに、使用したものを通気性のよいきれいなバッグに保管し、毎日取り替えて 5 日間のサイクルで使用すること(参照:米国CDC「Decontaminationand Reuse of Filtering Facepiece Respirators」)。
source:(厚生労働省, 2020)
蒸気化過酸化水素水・過酸化水素水プラズマ除染
蒸気化過酸化水素水・過酸化水素水プラズマ除染についてのソース
後で要約しますが、できれば、自力でソースに当たってください。
ソースはこちら ↓
https://www.n95decon.org/ (←このサイトの下の方に載ってます)
日本語訳はJRGOICPからでてます↓
http://jrgoicp.umin.ac.jp/ppewg/n95decon/HPV_N95DECONVer.1_JP.pdf
蒸気化過酸化水素・過酸化水素水プラズマのN95DECONリーフレット要約
蒸気化過酸化水素・過酸化水素水プラズマよる除染効果については、以下の報告があります。
- 過酸化水素はウイルスや高い耐性を示す細菌芽胞を不活化する(コロナウイルス での知見は報告されていません)
そして、N95の湿熱環境による品質保持については、以下のように報告されてます。
- 3M 1860 N95ではHPV処理を20回実施して もフィル ター、ストラップ、フィッティング 性能は低下しなかった
- 3M 8822 N95では低濃度のHPGP処理を2回実 施して もフィッティングは劣化しなかった
- 3M 1860とKC P FR95 N95では、高濃度の HPGP処理によりフィルター性能が低下した
なお、注意事項として、以下が挙げられています。
- 過酸化水素水は、適切な使用をしないと、燃焼・爆発の危険がある
湿熱除染
湿熱除染についてのソース
後で要約しますが、できれば、自力でソースに当たってください。
ソースはこちら ↓
https://www.n95decon.org/ (←このサイトの下の方に載ってます)
日本語訳はJRGOICPからでてます↓
http://jrgoicp.umin.ac.jp/ppewg/n95decon/Heat_N95DECONVer.1_JP.pdf
温熱除染のN95DECONリーフレット要約
まず、温熱による除染効果については、以下の報告があります。
- 70°C、湿度85%、30分でN95上のH1N1およびH5N1インフルエンザ(非コロナウイルス)を不活化
- この方法で、N95上の全て の細菌やカビの胞子を不活化できるわけではない
- N95は低熱、低湿では滅菌されない
- N95上のコロナウイルスの熱不活化に関するデータはない
そして、N95の湿熱環境による品質保持については、以下のように報告されてます。
- N95は60°C、湿度80%での加熱を5回繰り返しても、フィルター性能を維持
- N95は65°C、湿度85%での加熱を1 回行った後で も適切な密閉性を維持することが示された
- 熱サイク ルを 繰り返すと、N95のフィッティングとフィルターが損傷する可能性がある
- 多くの装置で65-80°C、50-85%の湿度維持が可能である(保温キャビネット、水槽、オートクレーブ、オーブン)
温度70℃で料理できる…と言えば、ホットクックとかオーブン! ただ、湿度の調整は無理だろうし、蒸し焼き料理だと結露もできるだろうし、本当に除染できるのか、この方法で除染できたとして肝心のフィルター機能やフィッテイング機能が保たれるのかについては、まだ検討の余地はあるものの、根拠のない除染方法よりは、かなりマシな可能性が高いです。まだ、ホットクックでの除染は全くオススメできないけど、だれか調べておしえて! エロい人!
温熱除染を使う際、参考になる日本語ブログ&Tweet
N95DECOMによると、N95は低熱低湿では滅菌されないため、湿度も一定の値以上に保つ必要があるとのことです。以下の方法は、湿度に触れていない点でN95DECOMのものとは違うのですが、この2つの記事のおかげで、N95マスクを再利用しなければいけないほど物資が不足していることに気づくことができました。また、自分の家庭で除染できる可能性も示唆されており、とても参考になりましたので、紹介します。
🐾肉球せんせい@皮膚科専門医/漫画イラスト描き/美容医療 @29Qsenseiが、2020年4月8日に、ホットクックでの除染の可能性について、呟いていらっしゃいます。
また、おのぶた @OnobutaOnsen サマも、ブログの「サージカルマスク、N95マスクの再利用について」で、真空断熱マグを用いた除染の可能性について、記事にしていらっしゃいます。
UV-C除染
UV-C除染についてのソース
ソースのみ紹介します。個人的に、UV-Cはフィルターやフィッテイング機能の劣化を招くんじゃないかと、勝手に妄想してるからです。根拠が妄想なところが医師免許持つ者としてどうよ、という批判は甘んじて受けます。ソース貼っとくので、ご判断は各自で!! もしこの方法使えるんならかなり良いとは思うのだけど…。
ソースはこちら ↓
https://www.n95decon.org/ (←このサイトの下の方に載ってます)
日本語訳はJRGOICPからでてます↓
http://jrgoicp.umin.ac.jp/ppewg/n95decon/UVC_N95DECONJVer.1_JP.pdf
おまけ:マスクの外し方
この動画Tweetがいつまであるかわからないけど、貼っておきます。
ジップロックのコンテナーを顔に押し当てて、マスクはずして、ゴムの部分はコンテナーの後ろにくるっと回して、フタするの(文章で伝わるかな)。動画が見える間は、見てね。
Stumbled on this video on Facebook and thought it would be worth sharing here. pic.twitter.com/spITZlE7Cq
— Christian Assad, MD (@ChristianAssad) March 31, 2020
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References
CDC, (2020). Decontamination and Reuse of Filtering Facepiece Respirators. Retrieved from https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/ppe-strategy/decontamination-reuse-respirators.html
Christian Assad, MD [@ChristianAssad](2020, March 30). Stumbled on this video on Facebook and thought it would be worth sharing here.[Tweet]. Retrieved from https://twitter.com/ChristianAssad/status/1244789355249532929
JRGOICP 職業感染制御研究会, (2020, April 9). N95/DS2マスク除染と再利用に関する情報公開ページ [Revised on 2020, April 13]. Retrieved from http://jrgoicp.umin.ac.jp/index_ppewg_n95decon.html
N95DECON. (2020, April 1). A scientific consortium for data-driven study of N95 filtering facepiece respirator decontamination [Revised on 2020, April 5]. Retrieved from https://www.n95decon.org/
おのぶた. (2020, April 6). サージカルマスク、N95マスクの再利用について, 日常からの放浪. Retrieved from https://onobutaonnsenn.naturum.ne.jp/e3322466.html
厚生労働省. (2020, April 10). N95 マスクの例外的取扱いについて. Retrieved from https://www.mhlw.go.jp/content/000621007.pdf
🐾肉球せんせい@皮膚科専門医/漫画イラスト描き/美容医療 [@29Qsensei]. (2020, April 8) #SHARP の #ホットクック でサージカルマスクやN95マスクの質を落とさずウィルス失活化し再利用できる可能性。 マスクは濡らしたり80度以上だとフィルタに悪影響なので、濡れない袋に密封し60〜70℃で30分以上加熱で行けるかもしれません。適応外使用ですが普通に洗うより機能が担保できるかと思います [Tweet]. Retrieved from https://twitter.com/29Qsensei/status/1248038578761773057
大変、詳細な報告で力作です。ありがとうございました。
おのぶたさま
おのぶたさまのブログ記事拝見した直後に、厚労省からの「N95の例外的仕様について」の事務連絡が発表になりました。おのぶたさまの記事を読まなかったらこんなに早く動けなかったと思うので、とても感謝しています。本当にありがとうございます。