どうも、Castella (カステラ女王様 @Rainha_Castella )です。普段は医師免許持ってることも忘れて、ハウステンボスのことばっか考えています。「ハウステンボスについてもっと暑苦しく語るブログ」も順調に更新中です(嘘です、まだ記事3つ目です)。
さて、こんなへなちょこブログですが、ご質問をいただきました。似た内容で2つも!
このような見るからに怪しい隠居系ブログに質問してくださるなんて、びっくり嬉しいです。ありがとうございます。2つとも産業医の先生からだったので、産業医向けに書いてますが、ストレスチェックで面談しようかどうしようか迷ってる方にも、参考になるように書いてます。かなり赤裸々です。
さて、今回頂いた2件の質問の内容を2行でまとめると、以下のようになります(実際はもっと丁寧かつ真摯な文章でした、はしょりすぎ、ゴメン)。
産業医ってストレスチェック後の面談で診断も治療もしないの?
じゃあ何するの?
目次でサクッと把握
いきなりまとめ
誤解を恐れずに、上の質問に雑に答えると、
産業医は、
ストレスチェック後の面談において、事例性を視て(診るじゃなくて)、疾病性を判断し(診断じゃなくて)、(必要なら)外部医療機関の医師への受診を促す
のです。これ基本。
事例性・疾病性については、ご存知の方の方が多いと思いますが、雑に説明すると、
- 事例性とは、業務上何が問題になっているかなどの客観的な事実。例えば、「今までできてたのに仕事ができなくなった」「仕事に集中できなくなった」「部下に離職者が多い」「上司の命令に従わなくなった」「勤務状況が悪い」「周囲とのトラブルが増えた」など
- 疾病性とは、医師が事実に基づいて判断する部分。例えば、「幻聴がある」「被害妄想がある」「うつ病が疑われる」など
産業医は、当該職域で働く人たちについて「患者としてではなく」「働いている」「入社時のぴっちぴちの状態から」見ている超レア職。一般に、事例性は、家族や職場の同僚や上司しか把握できないのですが、産業医は医師の立場でありながら、事例性を把握できるのです。
これってすごくない?
しかも、(一応)医師なので、「疾病性がありそうだ」くらいまでは判断できます。各々の診断については、たまーに精神科医でも意見が違うことがあるくらいなので、(精神科医でない)産業医が診断をつけることはやっちゃアカンことです。でも、「疾病性がありそう」までの判断はOK。ってか、むしろヤれ。
病院とかで働いてると、本当は愉快な人とか、いつもは元気な人も、「病気の状態」で病院に来ちゃうでしょ(病院だから当たり前だけど)、でも、産業医はいつもの状態の「その人」と話し、接することができるんです! せっかくそういう機能を持ってるんだから、自分の機能は使い倒しましょう。
ストレスチェック後、高ストレスの人と、ちゃんと面接までできれば70点かな。それ以上高得点にを取りたかったら、ライザップみたいに、結果(職場の働き方や環境)にがっつりコミットしなきゃだよ。
産業医って、医師免許いらないんでしょ?
マジレスすると、産業医は全員、医師免許持ってます
いやあ、リアルによく尋ねられるんですよね。特に医者からw
もちろん、そういう先生方は、「産業医の仕事は医師免許いらないじゃん」っていう意味の嫌味で尋ねてるわけですが、面白いので、気分によっては、懇切丁寧に暑苦しく超上から目線で「お♥し♥え♥て」あげることにしてます。そうです嫌がらせです。
今回の質問者は、お二人とも産業医だったので、その必要はなかったんだけどね。
産業医って臨床やんないの?
うーん、どうだろう。私は、産業医として一番頑張ってた頃は、全く臨床やってなかったです。
理由は、私個人にとっては、その2つは、両立できるものではなかったから。そんだけの理由。
基礎医学やってる先生と臨床医がだいぶ違うように、「私にとっては」、産業医も臨床医とは違うものです。産業医として、従業員の健診くらいはするけど、それも臨床とは断じて違うし。
今となってはつまんないコダワリですが、産業医やってるときは、普段は白衣すら着てなかったです。仕事着は作業服+必要に応じてヘルメット。健診の時に白衣着てたら、「カステラさん、コスプレですか?」とか聞かれたんだせ。
ま、今は、産業医ですらないわけですがね。当時は、踊って歌える 割とちゃんと仕事する産業医だったと、自分では思います。なお、踊りは今もやってるんだぜ! (登美丘高校 ダンス部すごいよね♪ ファンです! やっぱり、ライザップより登美丘高校 ダンス部が好み!)
でも、臨床やってる産業医もけっこういます。週4日産業医をがっつり行い、金土は救急医として働き(当直もこなし)2人の子供のママやってるような頭おかしい 超有能な産業医と臨床医のハイブリッド医は実存します。そこまで頭おかしくなくても 超有能でなくても、臨床しながら産業医もやってる人なんてたくさんいます。
そして、隠居してから、上から目線でふわっとゆるく眺めると、臨床のできる産業医、あるいは産業医マインドのある臨床医って、超ありがたいし、世のため人のためになってるんですよね。
産業医をすることが今後あるとしたら、「私」は、産業医「だけ」に特化した産業医になると思うけど、臨床もやってる産業医とは、超仲良くしようと目論むことでしょう。だって、そうした方が、自分にできることが増えるからさ。自分にできることが増えた方が楽しいじゃん? 他人のスキルは自分のスキル、心はいつもジャイアンです。
とりあえず、知っておこう:厚生労働省のストレスチェックの実施者になれるのは医師、保健師、精神保健福祉士などの有資格者だけ
産業医の存在が、企業の人事や安全衛生部門以外の人にも、なんとなく認識されたのは、ストレスチェックのおかげなのかも知れません。
というのも、ストレスチェックの実施者となれるのは医師(大抵産業医だけど外注できなくもない)、保健師、そして精神保健福祉士等の資格者に限定されるから。あと、ストレスチェック後の医師による面談も、産業医がやった方がスムーズ(法律上は、医師なら誰でもいいんだけどね)。
なお、ストレスチェック後の面談は時々、医師バイトなどでも求人があります。
私は、ストレスチェック後の面談は、その企業知ってる医師がやらないと意味ないと思ってるから、ストレスチェック後の面談バイトはしないけど、日本にいて、企業で働く人たちの働く環境やストレスに対して、コミットできる先生方ならやってみてもいいんじゃないかな。
産業医と臨床メインでやってる医師(町のお医者さん)とどう違うの? 普段何やってんの?
言葉で上手に説明できる気がしないので一覧表にしてみます。全部読むのがめんどい人は黄色のとこだけ読めば十分。
産業医 | 町のお医者さん | |
筆者の偏見に基づくイメージ
注:異論は認めますが、抗議はスルーします。 |
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契約相手
契約内容 |
事業主
業務の契約 |
患者さん
治療の契約 |
根拠となる法律 | 医師法・安衛法 | 医師法・医療法 |
対象 | 従業員=働けるくらいには健康な人 | 患者さん=病気などの事情があってクリニックを訪れる人 |
目的 | 労働者が健康を損なわずに働けるようにする | 患者さんの病気を診断し、治療する |
すること |
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しないこと |
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どっちの味方? | 中立というより公正。迷ったら微妙に従業員寄り(ホントです、かなり) | 患者さん寄り(そうでないと困る) |
産業医資格、ちゃんと機能してます?
ストレスチェック、2回目終わりましたか? やりっぱなしになってない?
厚生労働省では、ストレスチェック義務化したり、過労死等防止対策白書を公表したりと、職域でのメンタルヘルスや過労について、本気で何かしようとしているようです。下の記事も(ちょこっと)参考になるかも(無駄に長いので読まなくていいです)。
さて、法律通りに厚生労働省のストレスチェックが行われていれば、すでに11月30日までに、労働者が常時50人以上いる事業所では2回目が行われているはず。
ストレスチェック受けたらストレスが減るかって? 減るわけないじゃないですか〜! 何言ってんですか!
じゃ、模試受けたら学力上がりますか? 上がりませんよね? PDCAサイクルがんがん回さないと。
ダンスも同じ! ビデオみてチェックするだけじゃ、上手にならないから!!!
産業医、機能してる?
労働者が常時50人以上いる事業場には、産業医の選任も義務付けられてるんですが。。。
私のメンタルヘルス苦手は今に始まったことではないですが、ストレスチェックは、そういう残念な産業医にも、数値で従業員のストレスについて示してくれるわけです。
で、残念な産業医でも、産業医であるからには、去年との比較くらいはやってる。。。というか、しないと気持ち悪い境地になってる、比較したら職場にフィードバックしたくってたまらないはずです。だって、そこが一番楽しいし、そこで役に立てるんだから!
ストレスチェック後の面談は、産業医でなくてもかまいません。極端な話、外部委託でも。けど、その結果について、職場に対して何のフィードバックももたらさない産業医は、控えめに言って「ぜんっぜん」仕事してません。
産業医だけど、精神科医じゃないんだよね
精神科医じゃない産業医にストレスが扱えるのか
でも、その人がいつものその人じゃないことに、産業医は気づくはずだし、気づくべき。
精神科専門医の産業医は20%以下。産業医が精神科医じゃないのは普通のことです。
でも、産業医はいつもの状態の「従業員」と話し、接することができるんです。
さらに、産業医は、同業他社ではどうなのか、同社内他部署ではどうなのか、そこで働く人たちの標準の働き方を知っている。
せっかくそういう機能を持ってるんだから、その機能は使い倒しましょう。いつもの状態と違うことや、他社と比べて明らかに雰囲気悪いことにすら気づかないんだったら、産業医雇ってる意味ってないじゃん! そこまでできてやっと70点。
産業医が扱うのは、ストレスじゃなくて、「職場」とその「職場で働く人」
先にも書いたように、産業医と一般的なお医者さんを明確に分けているのは、産業医は、その職場について詳しい医者だって部分です。精神科医より精神科について詳しくなくてもいいし、循環器科医より過労が関与する心疾患や高血圧について知ってなくていいし、眼科医より眼精疲労について分かってなくてもいい。
でも、産業医であるからには、その職場とその職場で働く人について、世界一詳しくありたいし、その知見に基づいて、職場環境そこで働く人たちに対して、医学的に合理的な判断が下せるようでありたいってこと。
逆に言えば、職場とそこで働く人を知らない産業医は産業廃棄物以下。
まとめ:産業医は診断も治療もしない、しかし他の企業や部署や、その人のいつもの状態を知っている
冒頭のいきなりまとめで、「産業医は、ストレスチェック後の面談において、事例性を視て、疾病性を判断し、(必要なら)外部医療機関の医師への受診を促す」と、記載しましたが、そんなことができるのは、産業医が、他の企業や他の部署を見ており、その人のいつもの状態を知っている医者だからです。
循環器医が心音だけで「逆流がありそうだ」と診断できるように、精神科医がその人と少し話しただけで「プレコックス感」を感じ取るように、産業医は面談で「この人の職場は他と何か違う」「この人はいつもの状態ではない」ことが判断できます。
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私、ストレスチェック後の面談自体をしたことないんですが。。。